嗤うケダモノ

いやいや… 杏子サン?

目下、困ってンのは、握られた手だから。
今にもツブされそーな手だから。


「杏子さ… はは放して…
やっぱなんか怒って」


「でもね? ヒナちゃん?
ジンが一人前になるまで、待っててやってくれないかしら?
ヒナちゃんなら引く手数多だろうケド、それでも待っててやってくれないかしら?」


全く聞いてねェェェェェ!
そして放してもらえねェェェェェ!

ナニコレ?

一種の脅迫なの?
引く手数多になる前に引かれる手をツブしてしまえ、的な企みなの?

そんな心配いらねェから!
そんな物好き、滅多やたらにいねェから!

はーなーしーてェェェェェ??!!


「ははははひ!」


全身を強張らせた日向が脂汗を流しながらカクカク頷くと、杏子はパっと顔を輝かせた。

とりあえず手は解放される。
だが、代わりに肩を抱かれる。

よかったわー
さぁ、女二人で今後のコトを話しまショ
赤ちゃんが出来たら、同居したいなぁ…
ダメ?ダメ?
あ、家事は苦手でも大丈夫よ!
カズヨさんがいるから!
私?私は家電クラッシャーよ!

豪快に笑って、日向の肩を抱いたまま半地下スペースを後にする杏子。

もちろん、階段に転がる由仁を跨いで。

ヒドいわ。
てか、アンタが一番気ィ早いわ。

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