嗤うケダモノ

「ヒーナーちゃんっ」


「あ、オジーチャン。
オジーチャンもアイスコーヒー飲む?」


風を纏ってフワリと現れた空狐を、氷満載のポットを手にした日向が振り返った。

ココは遊廓風お屋敷のキッチン。

ドリッパーにゆっくりお湯を注ぐと、深みのある落ち着いた香りが辺りに広がる。

もう慣れたもんデスヨ、ハイ。

突如として出没する空狐にも。
自宅のモノよりもかなり広い、このキッチンにも。

『予行演習』という名の官能の日々は、母の勘を働かせた杏子が一時帰宅したせいで、早々に切り上げられたワケなのだが…

それでも日向は、現在通い妻状態。

三日と空けずに呼び出され、由仁と二人仲良く料理をしたり、由仁と二人仲良く望遠鏡で星を見たり、由仁と二人仲良くたまには出掛けたり…

完全にヤツのペースに巻き込まれてんな、とは思うが、イヤではない。

むしろ… その… ゴニョゴニョ…

まぁ、アレだ。
夏休みを堪能してるってコトで。

それに、画期的な出来事もありまして。

なんと…
由仁が勉強を始めたのだ。

夏休みの課題なんて、サクっと終わっちゃったよ。
由仁に教わったおかげで、日向の課題まで終わっちゃったよ。

なんの心境の変化だ、コラ。

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