嗤うケダモノ
日向は心底呆れた顔で由仁とアキを見比べた。
目を輝かせた由仁は、
「握手してくれっカナ」
とかなんとか、理解不能語を呟いている。
人間をやめたっぽいアキは、
『ニオウ ニオウ…』
『オヤダマ オヤダマ…』
とかなんとか、またも意味不明語を呟いている。
ナニコレ?
ドッチとも、会話が成立する気がしねェよ…
深く息を吐き出して表情を引き締めた日向は、由仁の腕をスルリと抜け出した。
なんとかしなきゃ。
なんとかして、現状を打破しなきゃ。
ドアを塞ぐように立つアキに体当たりをカマして、その隙に巻き込んでしまった由仁だけでも…
「先輩。
玄関まで走って、逃げて。」
短く言い切った日向は、アキに向かって身構えた。
だが飛び出す寸前に背後から抱き竦められ、突進を阻まれる。
「ヒナって、バカだよねー。」
「は…
はぁぁぁぁぁ??!!」
そりゃ自覚はあるケド、憑かれたヤツに握手求めちゃう大バカ野郎にだけは言われたかねェよ!
日向が険しい顔で背中にピッタリ張りつく由仁を振り返ると、彼は日向よりもずっと、もっと 怒った顔をしていた。