嗤うケダモノ
漆
「俺の日向に触ンなぁぁぁ!!」
頭の中のダレかさんの声をあえて掻き消すように、由仁は絶叫した。
途端に彼の全身から放たれる閃光。
同時に弾き出された小さな影。
声にならない悲鳴を上げ、仰け反る両親もどき。
そして、天井を仰いだ両親もどきの、真っ黒だった目と口から逃げるように噴き出した鈍色の霞み‥‥‥
ナニコレ?
特撮?
CG?
そんな、常識を打ち壊す光景を目の当たりにした日向は…
(先輩…
『日向』って…
え… なんで知ってンだろ…)
ボンヤリとそんなコトを思っていた。
現実逃避デスネ。
ソーデスネ。
だが、過酷な現実は休む暇なく襲いかかる。
日向ではなく、アキもどきに。
さっきの閃光の名残だろうか。
白く揺らめく陽炎を身に纏った由仁が、ゆっくりと起き上がった。
片手で乱れた髪を撫でつけながら伏せていた顔を上げ、日向に指を伸ばしたまま硬直するアキもどきを鋭く睨む。
金色に輝く瞳で。
『キュービ! キュービィィ!』
甲高い悲鳴が部屋に反響した。