嗤うケダモノ

今まで、どちらかというと自分は淡白な人間だと思っていた。

ナニカに必死になったコトなどなく、極めて諦めの良いほうだった。

そもそも、めんどくさいコトは大嫌いだしネ。

なのに…


「‥‥‥触ンなよ…」


俯き、前髪で目を隠した由仁は 掠れた声で呟いた。

こんなにも激しい感情を覚えたのは生まれて初めてだ。

ドコかに潜んでいたドロリとした紅蓮のマグマが、血管を通って全身を駆け巡る。

熱い…

だが、燃え上がりそうな身体とは逆に、頭は妙に冷えていく。

その頭の中で、不意に誰かが叫んだ。


 やめろ
 やめるんじゃ、由仁!


ダレ?
てか、ナニを?

もう手遅れだ。
もう止まらない。

なんちゃって、ごめんネ?

止める気もないンだ。

誰も彼女に触れさせたくないから。

焔と化した肉体と氷塊と化した心の狭間で。

ナニカ ガ アフレダス


 やめろ─────!
 おまえが消えてしまう──!!

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