嗤うケダモノ


切られたザイルなど諸々の痕跡を抹消し、無事にアキのマンションを脱出。

由仁のバイクで家の近所の公園まで送ってもらった日向は、緊張した表情でヘルメットを脱いだ。

日曜の夕方だからだろうか、遊んでいる子供の姿はない。

彼に手を引かれて窮地を逃れ、彼の背中にしがみついてこの場所に辿り着く。

物珍しそうにブランコを揺らしに行った空狐の存在と、辺りが黄昏色に染まっていることを除けば、あの夜と全く同じシチュエーションだ。

日向の中に芽生えた疑惑はますます大きくなり、既に確信の域に達している。

もう放置はできない。
確かめなくちゃ…


「先輩。
今日は本当にありがとうございました。」


バイクに跨がったままの由仁にヘルメットを差し出しながら、日向は頭を下げた。


「ソレ、何回も聞いたし。
そろそろ『先輩、アイシテル☆』とか言って欲しー。」


笑みを含んだセクシーボイスが耳を擽る。

うん。
そーゆーリアクション、予想してた。

顔を上げると、どこか悪戯そうな艶のある微笑み。

そーゆー顔も予想してたよ。

少しずつ、少しずつ、知らなかった彼を知る。

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