嗤うケダモノ

「先輩…
全部わかってたンですね。」


強い眼差しで由仁を見つめた日向が、軽く息を吐いてから口を開いた。


「んー?
ヒナが俺をアイシテルってコトー?」


「はぐらかさないでください。
私、今日は家の場所言ってませんよ。」


日向の言葉を聞いた由仁の目が 一瞬大きく見開かれた。
その後、気まずそうに夕焼け空に向けられて…

ってソレ、肯定デスヨネ?


「やっぱり…
でも、どうして…」


正気を疑うほど飾り立てたあの頃の自分と、ありのままを晒した今の自分。

全然違うのに…

日向は動揺に揺れる瞳で由仁を見つめたまま、茫然と呟いた。

困ったように頭を掻いて日向を見下ろした由仁が、かけっぱなしだったエンジンを止める。


「忘れられるハズも、気づかないハズもないじゃん。
その目。」


「え? は? 目?」


「そー。ヒナの目。
ヒナの視線ってねー、角膜突き破って脳を直接刺激するくらい インパクトあるよ?」


バイクを降りた由仁がゆっくり腰を屈め、戸惑う日向の顔を覗き込んだ。

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