【完】白衣とお菓子といたずらと
固定を外して病室に戻ったあと、すぐにナースに頼んで足浴の準備をしてもらった。


洗いましょうか?と言ってきたナースはやんわりと断った。


自分でも出来る事をわざわざしてもらいたくはない。


まー、ただでさえ忙しそうなのに俺が迷惑掛けるわけにはいかないってのがあるからだけど。


お湯に浸し、皮膚に傷を付けないように、ゆっくりとした力加減で洗っていく。


落ちる落ちる、ポロポロポロポロと。


「……リハビリもあるし、綺麗にしておかないとな」


病室に誰も居ないのをいいことに、1人ぶつぶつと呟きながら作業を続けた。


固定した部分をリハビリでは見られたり、触れたりする機会が増えてくる。


その相手が小川さんだと思うと、尚更こんな汚れたままの足では、申し訳ない。


池田、大山、香坂たちならばここまで気にならないけど、小川さんなら話は変わってくる。


どんな状態でも、彼女は気にせずにリハビリをするとは思う。けれど、それじゃあ俺が嫌なんだ。


少しでも綺麗な状態にしておかないとな。


……って、考え事をしながらでは手が止まりがち。


一旦無駄な思考をストップさせて、黙々と足を洗うことに専念することにした。
< 35 / 220 >

この作品をシェア

pagetop