【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
「はぁー」
その男がなにかを言う前に私は一度、呼吸を整え視線を自分の足元へと向けた。
さっきまで私と戦闘を繰り広げていた、足元に横たわる五人の男達---
風で運ばれてきた男達の血の匂いに目を細めながらそれを一瞥し、思考は先程までの戦闘を思い出す。
フラリと通りかかった人気のない駐車場を歩いていたら私を待ち伏せしていたのか、潜んでいた男達が一斉に私に向かってきたのだ。
私がここを通りかかったのは単なる偶然。
それなのに何で足元に転がっているこの男達は、私がここに来るのか分かったのだろうか?
まぁ…、
そんな事はどうでもいい。
それよりもこいつらとの戦いは、あまりにも弱すぎて準備運動にもならなかったと言う事。
本当にあっけなかったと思い出し、ため息をつく。
そしてもう一度、視線をさっきの金髪男へと向けた。
金髪男の後ろには十人程の男達がいる。
足元に転がっているこの男達よりは強そうだと感じ取った。