【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
そんな白虎の動きを見てすぐに分かった。
今先程立った男は、『紅』ではない事が分かったのだと---
まだ生徒会は『紅』が誰なのか検討もつけてはいないみたいだ。
それに『紅』は男だと勘違いしているようで、それには笑ってしまう。
思わず笑いが口から飛び出そうになり、瞳を伏せギュッと唇を噛んだ。
ここで笑ってはいけない…
そう自分に言い聞かせる。
そしてもう一度、白虎へと視線を向けた。
バチッと目が合ってしまった。
違う?
私の気のせい?
私自身の顔は長い前髪に覆われて、相手側から見えないのは自分でも把握済み。
って言うか分からないようにワザと前髪を垂らしているんだし---
だから私の顔なんて見れるわけはない。
それともたんに私の野暮ったい恰好が気になって見ているだけとか?
やはり…
白虎の視線は私に向かっているようだ---
私も前髪越しからジッと見てくる、その男を見た。
「………」
「………」
視線が合ったのはほんの数秒だっただろうか?
すぐに逸らされた白虎から分かった事。
それは…、
私が『紅』だと感づいていた分けではないと言うことだ---