【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
一瞬、聞き間違い?
…と思ったけれど、佐伯先生の視線がコッチを見ていることから間違いなく私を呼んだみたいだ。
私…、
何かした?
長い前髪の隙間から先生を見ると、少し怒っているように見える。
………何でだろう?
思わず身構える。
「はッ?じゃねぇ。お前、昨日の俺の授業サボっただろ?」
「………具合が悪くて『保健室に行ってたなんて言うなよ?俺は昨日、保健の先生にお前が保健室に行ったかの確認を取ったんだからな』………廊下でうずくまってました」
『保健室に行ってました』…と、言おうとした私の言葉を遮る佐伯先生の言葉にかなり焦ってしまった。
なんで保健の先生に、わざわざ確認取るのよ?
そう言いたかったけれどその言葉をグッと飲み込み、思いついた言葉をそのままボソリと呟いた。