【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~


そう思ったところで、私の傍に蓮が来た。




「あいつは良牙の小さい頃からの親友で章平って言うんだ。…数年前、良牙の目の前で第ニ段階の投与が行なわれている最中、息を引き取ったのを俺と良牙は見た。それなのに今まで生きていてしかもずっと、巨大な熊となって生きていたんだな」


「…そっか」



目の前では良牙が自分の耳に、親友の物であるピアスを付けているところだった。



そして死んでしまった章平君の手を取り、何かを語りかけているかのようにジッと黙って章平の躯を見ている。




『…死んだか。さぁ、綾香さん。わたしは今、研究所にいないから少し待ってもらう事になるがそれまでおとなしくしていて下さいね』



部屋中に響いた蓮の父親の声が聞こえたと思ったら、黒服の男達がバタバタとこちらに向かって走ってくるのが視界の隅に捉えた。


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