恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~


「サトさん、感じ良いですね」

私は、慶次郎を試すように、そんなことを言ってしまった。

「そうでしょ?」

慶次郎はカメラを触りながら、そう言っただけだった。

「昔からの知り合いなんですか?」

そんな突っ込んだ質問をしてしまう。
もし彼女だったら、と緊張してしまう。

「サトは、僕の幼なじみの妹なんですよ」

「あ~、そうなんですね。成人式の着物を選んでもらったと言っていたので」

幼なじみの妹と聞いて、安心している私。
でも、サトさんの立場になると、その片思い、長すぎるよ。

「サトが小さい頃から知ってるんで、彼女の着物も僕が選んだんです。成人式の写真も撮りました。まだ当時僕はサラリーマンでしたけどね」

ふたりには、長い歴史がある。
私の負けだね。

これ以上サトさんとの話を聞いていると、気持ちが落ち込んでしまいそうだったので、話題を変えた。

「慶次郎さんはおいくつなんですか?」

まだ年齢を聞いていなかった。
想像では三十五くらい。

「三十六です」

とすぐに答えが返ってきた。

五歳年上だった。
ちょうど良い歳の差じゃん、と心の中でガッツポーズをする。

詳しく聞いてみると、写真家達が展覧会を開くらしく、そこに出展するための写真のモデルだという。
そんな重要な写真のモデルになれるなんて。
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