恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~

「少しは結婚への憧れもありますけどね」

「それじゃあ、やはり危険です。お見合いの相手は結婚を望んでるんですよ」

眉を少し下げた慶次郎は、困ったような甘えたような表情で私を見つめた。

「大丈夫です! 私、今回のお見合いで最後にしようって決めてるんです。かなり年上の人ですし、母の頼みを断れなかっただけなんで」

私は、慶次郎を安心させたくて、そう答えた。
別にそういう関係でもないのに。

「安心しました。そうですか。真智さんはやっぱり優しい女性ですね」

褒められることにまだ慣れない。
今までの男は、偉そうな男が多かった。

「そんなことないですよ」

「今まで結婚せずにいてくれたことに感謝しないといけないですね」

どういう気持ちでそんな思わせぶりな発言をするんだろう。
プレイボーイなのか、天然なのか。
自分は結婚する気がないくせに。

「な~んてね。へへへ」

とかわいく目を細めた慶次郎。
たまらない。

私は、黒く光る不揃いな床を見つめながら、呼吸を整えた。

「あなたを誰にも渡したくない」

今までの慶次郎とは違っていた。
声も低く、見つめる目も真剣で。
吸い込まれそうだった。

「誰のものにもならないで」

そう言って、右手をそっと握った慶次郎。
ビクッと体に緊張が走る。


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