恋愛写真館~和服のカメラマンに恋をした~

「誰の・・・・・・ものでも、ないです」

そう答えるのが精一杯だった。
声を出すのも一苦労。

本当は言いたかった。
あなたのものになりたいと。

「僕は、少し酔っているようですね。すいません」

手を離した。

私は、また握ってくれることを期待して、テーブルの上に手を乗せたままだった。
でも、それっきり手を握ってくれることはない。

私の職場の話や、慶次郎の前の職場の話をして、時間が過ぎていく。
一線を越えそうで超えられない私達だった。


「あんみつ、頼みますよ」

美味しいあんみつは、別れの味。

きっと、あんみつを食べるたびに、慶次郎を思い出す。
一生、ね。

抹茶風味の寒天に、ゴロゴロした粒あん。
甘さを抑えた黒蜜が美味だ。




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