声が聴きたい



「処置の最中に意識も回復し、意志疎通もとれましたし、記憶などについても、しっかりとしています。ただ……」そこまで淀みなく話していたのに急に戸惑うように、言葉を止めた。


「さっき、君達にお願いしたいことがあると、いっただろう?」医者は俺と秀に向かい話始めた。


「うん」「あぁ」返事をすると。


「実はね、和希ちゃん、そのお母さんの手紙を読んだからかな、とても大きなキズが心にできてしまったんだ。」


『わかるね?』と言うように俺らを見ながら話す。


二人して無言で頷いた。


「だからね、目は覚めたんだけど、少しだけ耳が聴こえにくくなってるんだ。何にもなっていないのに、グワングワンと耳鳴りがしているそうだ。だから、二人にはそんな和希ちゃんを助けてあげて欲しい。普段よりもハッキリと、ちょっと声が大きいかなってくらいのボリュームで話してあげてくれるかな。」


「「わかった!!」」勢いよく揃って返事をすると、「そうそう、そんな感じで頼むよ」と優しく微笑んでくれた。


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