例えばここに君がいて

*

 慣れてくると学校は楽しい。
徐々にクラスメートにも馴染み、アダ名や名前で呼び合うことも増えた。
最初は緊張しか無かった教室も、居心地のいい場所へと変わっていく。


「今日は委員会の日ー」


後ろの席でヘッタクソな歌をうたうのは夏目信也。


「いいだろう。サユちゃん先輩と一緒だぜ。学級委員バンザイ」


いちいち勝ち誇られるのがムカつくんだよな。
コイツといるとホント不快指数が上がる。
関わりたくもないのに、席が近いってなんかの陰謀かよ。


「そうだな。お前のだーいすきな新見も一緒だな」

「うはぁ、こえー事言うなよ!」


途端に頭を抱える夏目。相変わらず、夏目は新見明菜が苦手らしい。


「おい、サトルー。体育祭実行委員会は今日は体育館集まれって」

「ラジャ」


 俺は和晃と一緒の委員だ。他に女子も二名いるけど、すぐに「いやー」とか「無理ー」とかいう系の俺の苦手なタイプで、あんまり話していない。

俺にとって、この体育祭はチャンスだ。
体育祭は縦割りで競うのだが、俺は一年二組、サユちゃんは二年二組。つまり同じ二組連合に入るわけで、いつもより学年の垣根を超えやすい。

あれから色々考えたが、結局はサユちゃんの心を変えられるのはサユちゃん自身でしかない。
だから今の俺をちゃんと男としてみてもらうしか無いんだろう。

とにかく男らしさアピール!
そういう意味でも体育祭はいい機会だ。


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