例えばここに君がいて

そして俺は受け身の時を終えた。

サユちゃんとは全く接点が無いわけじゃない。
志望校を決めるときに、双子を使ってサユちゃんの通ってる高校を聞きだした。
ここで女子校だったら一貫の終わりってとこだったが、幸い彼女の通う高校は共学で。
俺の学力レベルから行くと、頑張れば入れるという範囲。

死に物狂いで受験勉強をし、努力が実って無事合格。
ついにこの春から俺は彼女と同じ学校に通う。


この気持ちの名前を俺はまだ知らない。
恋なのかとも思うけど、妄想だけが先行してると言われればそんな気もするし。

一緒にいられれば、きっとその答えも見つけ出せるだろう。


「ちょっとサトル、呆けてるのもいい加減にしなさいー!!」

「うわっ、ちょ、母さん」


昔ガチャガチャで集めたおもちゃが投げつけられる。
こんなもんまで取ってあるのかよ。


「もっとこまめに捨てろよっ」

「うるさいわね。母さんだって忙しいのよ。毎日仕事だし子供は双子だしで」

「それにしたって、何年分だよ」

「多分この家建ててから、この部屋は掃除されてない……」


父さんが頭を抱えながら言う。

勘弁してくれよ。
最低でも15年はたってるって事じゃねーか。
埃アレルギーのやつが家にきたら、速攻で倒れるぞ。


「掃除は母さんだけの仕事じゃないのよ。皆同罪でしょ!」


雄叫びをあげる母さんには、全く反省の色がないらしい。

俺と父さんは顔を見合わせ、逆らっても無駄という判断をした。
文句を言う前に、一袋でもゴミ袋を一杯にした方が早そうだ。




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