例えばここに君がいて
12.俺を置いて流れてく。
 体育祭は、七組連合の総合優勝で幕を閉じた。キングオブパンダ。いや違うか、パンダイズキングか。


「赤ベコも頑張ったけどなぁ」


 俺たち二組連合は総合三位。保護者がいなくなったテントなどを片付けつつ、一箇所に集められていく看板を見ながらポツリと呟く。


「手が止まってるわよ、中津川くん」

「新見」

「何見てんの? 看板?」

「ああ、準備はあんなに大変だったのに、終わってみると一瞬なんだよなぁって思って」

「若いくせにおっさん臭い感想ね」


うるせぇよ。
軽く睨むと新見は笑って携帯を俺に見せびらかした。


「ほら、七組のパンダ待ち受けにしたの」

「おまえっ、するなら赤ベコだろ」

「私はパンダの方が好きだもん。中津川くんがすればいいじゃん」


確かに、しまわれる前に写メっておくか。


「俺、ちょっと写真撮ってくる」

「戻ってきたら倍働きなさいよ」


相変わらず優しさのない新見にその場を代わってもらい、看板を片付けている先輩方に頭を下げて、写真を取らせてもらった。


「あ、サトルくん。サユ見なかった?」

「和奏先輩。あれ、いないんですか?」

「うん。おかしいなー、いつもサユは片付けサボったりしないんだけど」

「ですよね」


どちらかと言えば率先して働くようなタイプだ。何かあったか? と心配になる。
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