復讐

「そうだよ。悪いかよ」

安田はそう言うと、美帆からバーボンを渡されクイと口に含んだ。

「いや、悪くはないですけど、そしたら安田さんは福島のご出身なんですか？」

「なに言ってんだよ。おれは根っからの栃木っ子だよ」

それを聞き、三井は腹を抱えて笑った。

「安田さん。江川は、たしかに栃木代表で甲子園行きましたけど、元は福島出身ですよ。きっと別の江川君だったんでしょうね」

そして、安田は驚いて口に含んだバーボンを吹き出した。

「そうなのか？」

「えぇ。福島出身ですよ。だから、安田さんがホームランを打った小学２年生の江川君は、あの江川とは別人ですよ」

安田はショックのあまり、グラスをテーブルの上に叩きつけると、俯き黙りこくった。

その時、ふいに扉の開く音が聞こえ、三人は入口を見た。

入口の扉は大きく開かれ、そこには幸治が申し訳なさそうに立っていた。

「お疲れ様です」

美帆が、慌てて幸治の元へ駆け寄った。

「大丈夫なの、幸治？」

「あぁ。もう大丈夫」

幸治はそう言うと安田と三井のもとへ歩み寄った。
「よく来たな」

安田は立ち上がり、幸治の肩をポンと叩いた。

そして三井は、目の前に立っている幸治を見て笑顔をこぼした。

「これで役者がそろったな。待ちくたびれたぞ。幸治君」

「すいません。お待たせしちゃって」

「いや、いいんだ。宜しく」

三井はそう言うと、幸治に向かって手を差し出し、幸治はそれをギュッと握った。

「こちらこそ」