甘い愛で縛りつけて
「なんか用があってきたんだろ?」
「あ、うん。事務長に、恭ちゃんの仕事を手伝ってあげて欲しいって言われたから。
毎日ってわけにはいかないけど、週に何度か行ってあげなさいって」
私の説明に、恭ちゃんが苦笑いを浮かべる。
「事務長、俺の事完全に子ども扱いしてんな」
「別にそういうつもりはないと思うけど。まだ慣れてないだろうからって。
誰にでも優しいんだよ。恭ちゃんには特別かもしれないけど」
「まぁ、気にかけてもらってるって事だし、嫌な気分じゃねーけどな」
「え、意外。恭ちゃんは人の善意とかをうざいとか思ってそうなのに」
「そんな非道じゃねーよ。どんな目で俺を見てるんだよ」
クって喉で笑った恭ちゃんが、座ったまま天井を仰ぐ。
「事務長と話してると、親ってこんな感じなんだろうなって思う」
恭ちゃんから出た言葉に正直驚いた。
事務長が、恭ちゃんが家族の話をしたがらないって言っていたから、多分踏み込んで欲しくない場所なんじゃないかなっていうのはなんとなく思っていた。
だから、自分からその話題を出してくれるなんて思ってもみなかったから、意外で。