甘い愛で縛りつけて


「うん。保健室前に貼ってただけだったと思うよ。立ち止まって読む生徒もいたか微妙だし……。
出さなくても問題ないような気もするけど、続けてきた事だから勝手にやめてもマズそうだよね」
「まぁ、それもそうだな。あとで権力ありそうな先生に聞いてやめさせてもらうか」

そう言って座ったまま背伸びしている恭ちゃんを眺めていると、その視線が私をとらえる。
ドキっとして目を逸らすと、「なんで逸らすんだよ」って怒られた。

「なんでって、ずっと見つめあってる方がおかしいでしょ」
「……実紅って、本当に俺の加虐心を煽るのがうまいよな」
「加虐……なに?」

聞きなれない言葉に首を傾げると、恭ちゃんが「いじめる事」って意味を教えてくれる。
つまり、私の態度を見ていると、恭ちゃんは私をいじめたくなるって事だ。

出た。特殊性癖。

「目逸らされて今みたいな態度とられると、無理やり俺の方見させたくなる」
「……それ、私のせいじゃなくて、恭ちゃんの性格のせいなんじゃないの? 恭ちゃん自分が気づいてないだけで多分変態だから」
「そんなわけないだろ。俺、別にいじめて楽しむ趣味ねーし」
「本気で言ってるなら、恭ちゃんはもっと自分を見た方がいいと思う……」

私の事からかって楽しそうに笑ってるんだから、どう考えたってそっちの趣味があるのに。



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