甘い愛で縛りつけて


『実紅も、昔の俺が好きだったんだろ?』
そう言った恭ちゃんの声に、悲しさが含まれているように感じるのは、なんで?

どうしていいか分からなくて見上げる先で、恭ちゃんは微笑んでいた。
昔の恭ちゃんの仮面をつけて。

「実紅、どうかした? 何か考えてるみたいだけど」
「……別にどうもしない。その口調もやめてってば。それと、いい加減にどいてくれないと大声出すから」
「考え事なら相談に乗るよ。昔みたいに心を開いてくれればいいのに」
「昔は、ただ子どもだっただけでしょ。本当に叫ぶから」
「できるならどうぞ」

微笑んだまま言う恭ちゃんを、キって睨みつける。

ここは学校だし、叫んだって助けのこないホテルとは違う。
大声を出せば、先生だって生徒だって飛んでくるんだから。
そうしたら、恭ちゃんは学校をクビになるかもしれないし、少なくとも何かしらの処分が下されて異動にもなるかもしれない。

私でも想定できる事なんだから、恭ちゃんだって分かってるんでしょ?
なのになんで……。

この間から、危険な綱渡りばかりしてまで私の気持ちを試す様な事ばかり言うの?

「どうしたの? 声、出さなくていいの? 俺に組み敷かれてるままがイヤなんだろ?」
「……分かってるくせに聞かないで。私が大声出せないって事くらい、分かってるんでしょ」


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