トマッタ時計
それから内藤くんは塾が終わった後にいつもうちに寄ってくれて、それが私の楽しみになっていた。



「音々ー、給食当番だよー」

「忘れてたごめん!早く行こ!」

「うん!」

侑李とエプロンを着ながら階段を降りる。

「音々ー」

「なにー?」

「あのさ、内藤くんと付き合ってんの?」

「え!?なんで!?」

「いや、最近仲いいし、いい感じだったから」

「付き合ってはないよ」

「じゃあ、好きなの?」

「好き・・・」

そんなこと考えてなかった。

ただ、内藤くんと話すことが楽しくて、内藤くんが塾の日にインターホンがなるのが待ち遠しかったりはするけど・・・。

それって好きってことなのかなぁ・・・。

「よく分かんないや・・・」

「そっか。もし音々が内藤くんのこと好きなら私は応援するからね!」

「うん、ありがとう」




侑李とそんなことを話した夜、内藤くんが来た。

いつものように他愛もない会話をする。

「ねえ、二人共付き合っちゃえば?」

お母さんのいきなりの言葉にすぐに言葉がでなかった。

「なんで?」

「二人共恋人いないでしょ?ならいいじゃん」

「ないない!内藤くんはめっちゃいい友達だもん!!」

この言葉を言ったことを私はすぐに後悔した。

自分で言ったはずなのになんか胸が凄く痛くて・・・。




いつも通りに外まで内藤くんを送る。

「じゃあね、ばいばい」

「ばいばい」

いつもと同じ風景。

内藤くんが角を曲がったのを確認してから家に入る。

まだ私はしらなかった。

これが最後になるということを・・・。
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