小春日和
 

あれから一週間。未だ卵以外の好物を見つけられない俺が、いつも通り姐さんの弁当を受け取りに厨房に顔を出すと、鼻息も荒く岩城さんは言い放った。



「今日の弁当は完食間違いねえ」



自信満々なその視線を追ってテーブルの上に目をやれば、そこに置かれていた弁当箱に絶句する。



「!!……この、弁当は…」



辛うじてそれだけ口にした俺に、一冊の本を取り出した岩城さん。



《女の子が大好き!美味しいく可愛いキャラ弁☆》



弁当箱の中には白い飯に黒いノリで作った、ツートンカラーの丸っこいパンダ。



その脇には、魚肉ソーセージで作ったピンク色のチューリップと、ウズラの卵にゴマで作った目と、黄色のクチバシらしきもんを付けた……ニワトリ…か?



その本にある女の子って、ガキの事じゃないですかね?決して女子高生向けじゃないと思うんすよ……。



顔面をひきつらせた俺の目の前で、いつもの布に手早く包まれて行く弁当。



そして、姐さんの様子を詳しく報告するようにと念を押す岩城さんに、俺は何も言うことが出来なかった。





……すみません姐さん。ヘタレな俺を許して下さい。


 

< 12 / 29 >

この作品をシェア

pagetop