空のこぼれた先に

サユの死を、しばらくは信じることができなかった。

……今だって、そうだ。


彼女が好きだったもの。

苦手だったもの。

一緒に過ごした場所、時間。

ふとしたときに思い出しては、もう二度と会えないのだと胸が締め付けられて苦しい。


今日の祭りだって、サユとの思い出に溢れている。

サユがいなくなる前までは、毎年一緒に行っていた。

ふたりきりで出かけた年もあったし、友達みんなで集まって、夜遅くまで遊び倒した年もある。



……そういえば、はじめて王族を見たのも、何年か前の祭りでだった。

来賓として呼ばれていた先代の女王。

かなり昔のことだから、記憶は曖昧な部分はあるけれど、そういえばとても美しく優しげな女王の隣には、自分と同じくらいの年の王女がいたような気がする。


まさかあの頃は、サユがあの王女の身代わりとして城に行くことになるなんて。

こんなにも早く別れが訪れてしまうことになるなんて。

想像もしていなかった。

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