イジワルな彼の甘い罠
子供だなんて、実感もわかないしその重みも想像でしか分かれない。
だけど、愛する相手との間に生まれる命を、
嬉しい、
愛しい、
そう想わないわけがないだろ。
「……一緒に、育てていこうな」
抱き締めたまま顔を上げさせ、その額にキスをする。
するとまた、その瞳からはポロポロと涙がこぼれ出す。
「なんだよ、また泣いて」
「だって……航が、そう言ってくれるとは思わなかった……」
「お前なぁ、俺のことどれだけ最低な奴だと思ってたんだよ」
作るだけ作って責任も取らない男だと思われていたのだろうか。
苦笑いをしてたずねると、早希は涙をこぼしたまま答える。
「だって私たちまだ結婚もしてないんだよ?航からその話も一向に出ないし……でもそんな中で妊娠なんて言ったら、焦らせるみたいだし、いきなり妊娠したなんて言って、引かれたらどうしようって……」
先ほどまでの沈黙が嘘のように、次々と溢れ出す言葉。それは、その心に積もり積もっていた不安。
「航に嫌われたら、この子と生きていける自信ないよ……」
「……バカ、」
ようやく知ることの出来たその胸の内に、俺は指先でその涙をそっと拭う。