赤ずきんは狼と恋に落ちる






言ってしまった。



気付いた時には、「好き」という言葉が、ぽつりと零れてしまっていた。



慌てて口を紡ぎ、背を向ける。




これはずっと言いたかったコトバで、

ずっと伝えたかったキモチ。



だけど、それを言ってしまったら、今の関係は崩れてしまう。



『恋人』か、『同居人』か、『他人』か。



「好き」と言ったら最後、目を瞑って、見たくない現実を突き付けられるのだ。





口元を押さえている手から、僅かに震えが伝わってくる。


何も聴こえない静寂のなか、「言うんじゃなかった」と、後悔の波が押し寄せてくる。





やっぱり、言っちゃダメだったよね……。



何を期待していたんだろう、私。


今のままの関係でも、十分じゃなかった?







震える手に、ぴとりと雫が降ってきた。





また泣いてる。


泣くぐらいなら、最初から言わなきゃ良かったのに。



馬鹿な私。






自分を罵倒する言葉ばかり、次から次へと出てくる。


また私が泣いていると、千景さんに余計な心配だけをかけてしまう。



そう思って、必死に唇を噛み、
涙を拭わず、

ソファーに小さな染みを作っていった。


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