赤ずきんは狼と恋に落ちる





掴みどころのない人だな……。


人当たりが良くて、何でもスマートにこなして。

その上、上司にも後輩の子たちにも好かれている。



つくづく私とは違う人間なんだなと思う。



前の一件のことをずるずると引きずっている私。

一方、ちゃんと謝った後も自然に接してくれている島上さん。



苦手意識や不自然な振舞いはダメだ。

島上さんは良い人なんだし、誠意をもって接するべき。



そうだそうだと一人で頷きながら、私も席に着いてもう一度渡された雑誌を読む。



おしゃれなバーや、可愛らしい雰囲気のカフェの写真を見ては千景さんと行ってみたいなと思ってみたり。



もしかしたら、千景さんのバーも載っているかもしれない。


探してみようと思い立った途端に、あることに気付いた。






私、千景さんのバーの名前、知らないや……。




気付いたのが遅すぎると、自分に呆れつつ、ぼんやりと初めて千景さんのバーに行った時のことを思い出す。




そういえばあの時、すごく疲れてたんだっけ。

何で疲れていたのかは思い出せない。


偶然見つけた小さな灯に吸い寄せられて、ドアをそっと開けて。

落ち着いた雰囲気の店内に、何だかホッとした。



その時に1杯だけお酒を飲んだ。

思っていたよりも甘くて、ゆるゆる力が抜けていって。


あまりにも居心地が好くて、長居しちゃいそうだったから20分くらい経って帰ったんだった。




もう1年近く経つのに、ふらりと寄ってさっさと帰るだけだったから、店名はおろか、住所さえ知らない。



今日帰ったら千景さんに訊いてみよう……。


知らなかったって言ったら、ショックかもな……。



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