赤ずきんは狼と恋に落ちる
零れ落ちそうになる涙を指ですくい、また苺タルトを一口食べる。
「うん。本当に美味しいです。またいつか、作ってくださいね」
「……また作ってあげる」
芳垣さんは、また泣かれると身構えていたのか、私の顔を不思議そうに見て、ぎこちなく笑った。
時間をかけてじっくり味わいながら食べる。
食べ終わっても、まだ甘酸っぱさが残っていて、少し切なかった。
「無理してる」
クスッと笑う芳垣さんに、痛いところを突かれた思いになるも、
「無理しないと、やっていけないんですよ」
と、強気の弱音を吐く。
「強くなったんじゃない?」
「そうでしょうか?」
「うん。前みたいにふらふらしてないし」
紅茶のおかわりを注ぐと、芳垣さんもふっと息を吐いた。
「お礼はこれだけ。アンタのおかげで仕事が増えたし、それで知名度も少し上がった。姉ちゃんも喜んでた。ありがとう」