赤ずきんは狼と恋に落ちる



「ありがとうございます」




嬉しかった。

頑張って書いてみて良かった。



この嬉しさのきっかけが、千景さんとの別れということが何とも言えないけれど。




マイナスの言葉を飲み込み、柔らかく笑う。




「とてもやりがいのある仕事ができたので、私も良かったです。お姉さんの方にも、伝えておいてください」

「分かった」







「またおいで」と手をひらひら振る芳垣さんに、ぺこりと頭を軽く下げて店を出た。





7月上旬。

もう26歳になる。




だんだんと夏らしくなっていく空気を感じながら、「何か自分へのプレゼントを買おう」と浮かぶように歩いて帰った。



< 208 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop