赤ずきんは狼と恋に落ちる



タンスの一番上にあった白のブラウスに袖を通し、はあっと大きく息を吐く。




千景さんがお風呂から上がったら、どんな顔をして、何を話せばいいんだろう。


無理矢理家に上がらせ、何も言わせないまま浴室に閉じ込めた。




感動の再会なのに、何故か残念な形になってしまった。



恋愛ドラマっぽいのに、と下らないことを考えながら、ボタンを適当に留め、そのまま乾燥機の前に座った。



ドライヤーで自分のスカートを乾かす。


これが乾いたら下に穿いて、千景さんと話そう。



濡れたままの下着が、はり付いているのにも気に留めないまま、ゴウゴウとドライヤーの轟音の中、また私はぼんやりと考え始めた。





やっぱり、一目千景さんを見たら、あの時の気持ちが湧いてしまう。


まだ好きだ。



でも、また離れていくかもしれない。



今日は千景さんの気まぐれで会いに来ただけかもしれない。


それはちょっと嫌だなあ……。




また一つ大きな溜め息を吐くと、乾燥機がピーッと音を立てた。



まだスカートは乾いていない。




でもそんなに時間は経っていないし、このままでも平気だろう。



服を取り出して簡単に畳み、自分の肩にバスタオルを引っかけて浴室に向かう。




ガチャリとドアを開けた瞬間、身体が固まった。





バスタオルを腰に巻き付けただけの、無防備な千景さん。



久しぶりに見た男の人の身体が、私には刺激的すぎた。






「わああああ!!ごめんなさい!!」

「えっ?!ああ、別にええけど……」

「あのっ、これ、乾かしたので!まだちょっと濡れてるかもしれません!ごめんなさい!」




出来るだけ見ないように俯きながら服を渡し、バタンッとドアを閉め、タオルで顔を押さえる。





無理だ。



1年と4カ月以上前の私は、千景さんとどんなふうに話していたんだろう。


あの頃の自分はすごかったのかもと、感心してみるも、すぐにあわあわしながらドアの前に座り込んだ。


< 213 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop