赤ずきんは狼と恋に落ちる
……どうしよう。
自分から言い出したものの、やっぱり自宅に連れて行くなんて恥ずかしい。
視線は下に落としたまま、ここで断ろうかどうか、悶々と考える。
でもそんな迷惑なことは出来ない……!
「りこさん」
「はいっ?!」
突然掴まれた腕。
「赤信号です。轢かれちゃいますよ」
ホッとしたような表情の宇佐城さんを見た後に、暗い道の中、小さく頼りなさげな赤信号がぼんやりと灯っているのに気付く。
「すみません!」
咄嗟に掴まれた腕をパッと離す私。
……あぁ、やってしまった。
こんな時、どんな風に対応するべきなのか。
何て言うべきか。
分からない。
だから、愛想なく相手を突き放してしまうのかもしれない。
こんな私だから、振られたんだな……。
ぐるぐると廻る、この悪循環。
急に沈んだ私に気付いたのか、宇佐城さんが私の顔を覗き込んだ。
「りこさん、手でも繋ぎます?」
「手、……ですか?!」
軽く頷きながら、宇佐城さんは大きな左手を出した。
「りこさん、さっきからずっとふらふらしてるし。心配なんです」
ふらふらしてるように見えたんだ……。
気落ちして下ばかり向いていた私を見れば、……確かにふらふら歩いているように見える。
でも、手まで繋いでもらって……。
「宇佐城さんは、いいんですか?」
「構いませんよ」
流暢な標準語で話す宇佐城さん。
だけど、独特のイントネーションが、優しげで。
「どうぞ」
と、差し出された左手に
甘えてしまっても、いい?
二度、宇佐城さんの顔と左手を見つめる。
その間も、彼はにこやかに笑ってくれていた。
「……ちょっとだけ、お願いします」
なるべく握り締めないように。
そっと、彼の指先だけ包んだ。