赤ずきんは狼と恋に落ちる
口元に弧を引きながら、宇佐城さんは私の顔をじっと見る。
「りこさん、俺を飼ってくれませんか?」
「む……っ、無理です!!」
「俺、優しいですよ?」
「優しい人だとは思ってますけど……!そんな、飼うなんて」
とんでもない!!
私はぶんぶんと首を横に振り、否定の意を表すだけで。
宇佐城さんは、さっきからその様子を楽しんでいるとも言えるような笑みを浮かべている。
「やっぱ、今日会ったばかりの男を家に入れるのは怖い?」
小首を傾げながら、残念そうに笑う宇佐城さん。
何だか、捨てられた仔犬みたいだ。
その切なそうな表情が、私は一番苦手だ。
構ってあげたいけれど、私がそんなことをしたら絶対に上手くいかなくなるに決まっている。
「い、いや!私まともに掃除なんてしてないから部屋が汚れているし、狭いし!もっと他の人の所を……」
どうにかして断ろうとするも、言葉が見つからない。
いや。
正しくは、見つけられなくなった、だ。
目の前で私を見ている彼の目が、何故か私に安心感を与えてくれる。
理由なんて分からない。
――けれど。
この人なら。
宇佐城さんなら。
一緒に住んでも、良いような気がした。
その安心感は、振られたばかりであるが故の寂しさからかもしれない。
私も、誰かに構ってもらいたかったのかもしれない。
「宇佐城さん」
「はい」
「今からうちを見に行きますか?」
気付いたら、世の中の父母親から非難されるような、とんでもないことを口走っていた。