だんご虫ヒーロー。
5話 お願い



翌日。



「…ありがとう、ございました……」



会計が終わったお客に軽くお辞儀をする。



若い、水着姿の男女。
見る限りカップルだと思う。



小さくなっていくそのカップルの後ろ姿を見ていると、ふと重なるのは先輩と雪菜ちゃんの姿。



仲良さそうに2人寄り添って歩くあのカップルが、先輩と雪菜ちゃんにしか見えない。



もし雪菜ちゃんの告白が成功していたら、今頃あの2人はああやって海を満喫していたのかな…



そんなことばかりを思ってしまう。



『…嘘つき……!!』



ズキッ



雪菜ちゃんに言われたあの言葉を思い出す度、胸が痛む。



昨日の出来事から今日の午後まで、ずっと雪菜ちゃんとは話してない。



話しかけようとはした。



でも雪菜ちゃんは何も言わずに私の横を通りすぎて、何処かに行ってしまう。


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