だんご虫ヒーロー。



「……やくそく……守れ…なくて………ごめん…ね……」



……約束?



彼方は何の約束を破ろうとしているの?



もしかして『しっかり元気になってね』っていう約束のことを言ってるの…?



だって治療がうまくいったから、もう元気になれるんでしょ?



リハビリも頑張ってきて、もう少しで退院出来るんじゃないかって言われてたんでしょ?



意味が分からずに彼方を見つめた。



彼方は弱々しく私に困ったような笑顔を見せた。



私がお使いに行く前に見せた笑顔とは全く違う、弱々しい笑顔。



その笑顔で全てを知った。



全てを知ったと同時にまた溢れ出した、大粒の涙。



「……もも…に……悲しい顔……してほしく……なかった…から………」



……ごめん、ね………



彼方はまた私の涙を力を振り絞って拭う。



彼方の言葉を聞いたおばさんとおじさんは涙をハンカチで拭っている。



おばさん達は知ってたんだ。



じゃあ、知らなかったのは私だけ?



私だけ彼方の体のこと何にも知らずに、今まで生きていたの?



私の涙を拭う彼方の手が冷たい。



……やだ、そんなのやだよ……



彼方は私の生きる意味なんだよ。



彼方がどこか遠くに行ってしまったら、私はどうすればいいの?



どうやって生きていけばいいの?


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