だんご虫ヒーロー。



コンコン



自分の頭を両手で押さえた瞬間、部屋のドアからノック音が聞こえた。



誰……?
綾女、学校終わってまた来たのかな?



何度来たって意味ないのに。



でも時計を見てもまだお昼にもなってなかった。



カーテンずっと閉めっぱなしだから、時計を見ないと時間が分からない。



じゃあ、お母さん?



お母さんのことだからきっと私を元気づけようと、10時のおやつでも持ってきたんだ。



無視してれば部屋の前に置いておくから、何も言わずにいようとした。



でもドアの向こうにいる人の声を聞いたら自然と声が出てしまった。



「……李、いる?俺、夕里…だけど…」



あ、チャラ男先輩って言った方が分かりやすいかな?



ドアの向こうでクスクス笑っているのが聞こえる。



嘘……なんでここに来てるの…?



「…ゆうり……せんぱ、い?」



久し振りに誰かの名前を呼んだ気がする。



「そう、夕里先輩だよ。男から女の子の部屋を開けるのは失礼だと思うから、ドア開けてくれる?」



自分で自分のことを先輩って言うなんておかしな人だ。



しかもそんなマナー、聞いたことありませんよ。



そう思いながらも私の体は勝手に動いて、部屋のドアへと向かっていた。


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