だんご虫ヒーロー。



体が固まって前に進めない。



あまりにも綺麗な女性が笑顔で立っていたから。



ゴム手袋をしてスコップを持っているから、きっと花園の手入れをしていたんだろう。



家政婦さんじゃないよな……



「…あのもしかして李のお母様……ですか?」



茶髪に金髪のメッシュが所々に入っていて、ウェーブがかかってる。



女性ははいと返事をする代わりにニコッと笑った。



笑った顔が若干、李に似ている気がした。



「…そういうあなたは……李のお友達かしら?」



あまりにも綺麗な顔立ちに、声が出ない。



だから李のお母さんの問いにも頷くことでしか返事が出来ない。



この人が李のお母さんじゃなかったら、きっと一目惚れしてた。



俺が女性の前で緊張するのは李以外に初めてだ。



俺が頷くと李のお母さんの表情がパアッと明るくなった。



「…まぁ!じゃあ、李に会いに来てくれたのね!嬉しいわ」



小首を傾げて完璧な笑顔を俺に向ける。



でも次にはその笑顔が曇った。


< 291 / 554 >

この作品をシェア

pagetop