だんご虫ヒーロー。

彼の決断




自分の部屋に入ってすぐにベッドに倒れ込む。



夕里が高校を卒業したら、パリへ留学してしまう。



そのことにはもちろん驚いたけど、それよりも……



また私は一人になってしまうということ。



夕里が一人でパリに行ってしまったら、私は孤独になる。



夕里と別れたわけじゃないけど、遠距離恋愛だけど孤独になる。



今まで夕里といつも一緒だったけど、ちょっとでも一人になると思い出すあの時の空っぽになった自分。



彼方がいなくなって、生きる意味を失った空っぽの自分を夢に見ることだってあった。



それを忘れるように夕里で埋め合わせてた自分がいる。



でも夕里がパリに行ってしまったら、埋め合わせも出来ない。



ずっと空っぽになった自分を繰り返し思い出す。



コンコン



ノック音が聞こえて部屋のドアが開くと、誰かがベッドに腰掛けた。



私はベッドにうつ伏せになってるから、誰が来たのか分からない。
でも見なくても、誰が来たのかはすぐ分かった。



「…李……」



夕里の声が聞こえて、私の頭を優しく撫でる。



優しくしないでよ。
今、私怒ってるんだから。



「……なんで……なんで私には言ってくれなかったの……?」



うつ伏せのまま思ったことを口にした。



夕里は手を止めずに私の頭を撫でている。


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