サクラ咲く

5万円の使い道。

結局、ビジネスホテルに泊まることは出来なかった。



客間に準備された、いつもの布団。


かのこしか使った形跡がない、かのこの匂いのする羽毛布団。



お風呂に先に入るよう言われ、食事の後片付けの後すぐにバスルームに入る。


アメニティも、いつものように準備されていた。



如月がどれだけかのこが来るのを待ちわびていたのか、手に取るように分かる。



断れなかったのはそれだけ…じゃないのかもしれない。



抱きしめられて、寂しいと感じたあの瞬間。



理解出来ない感情があるような気がして。



かのこは如月のマンションから出ることができなかった。



バスルームから出てリビングへ行くと。



ノートパソコンをカタカタと触る後ろ姿が見えた。


「お風呂…先にいただきました。ありがと…。」



スッピンを見せるのは恥ずかしくない。


ずっと小さい時から一緒だったから、今更な感じがして。



振り向いた如月はふわっと笑う。



「かのこはスッピンのがいいな。柔らかい感じがして俺は好きだな。」



…スッピン褒められたら、なんか複雑。



「部屋の準備で足りないものあれば言えよ。
俺も風呂に入ってくるわ。」


立ち上がる彼の背中を眺める。



昔より大きく感じる背中。


逞しい腕。



筋肉質な胸元。



意識して見たことがなかったせいか、いつもとは違う雰囲気がして少しだけドキドキした。


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