侍先生!
やっと舞台についた。


姫条とふたりで写真をとって、信長ごっこをする。


恥ずかしいけど、楽しい。
俺はこんな時間が一番好きなんだと思う。


はしゃぎすぎた姫条は、こけそうになった。
それを支えようと、手を伸ばすが、床が濡れていたため、俺も足を滑らしてこけてしまった。



………ゴン!


という鈍い音と、唇の感触。
デコは派手に当たったのに、唇だけ、触れるように当たった。


「…先生」


「な、なんだ」


「オデコがぶつかりました」


「そうだな」


「つ、ついでに…唇も」


「…そうだな」


かける言葉が見つからず、少し動揺していた。
とりあえず、立ち上がった。


「立てるか?」


「い、いえす」


「ケガは?」


「してないです」


俺はただ、『そうか』としか言えなかった。
もしかして、こいつ、ファーストキスなんじゃないか?
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