侍先生!
「ごめんな、なんか」


「え!? いえ!! むしろ、ラッキーってゆうか…」


「お前、考えがおっさんだな。 まあ、気にしてないならいいけど」


「…先生は、気にしてる?」


「まあな」


あからさまに、『うん』とは言えなかった。
言ってしまうと、そのノリで、言ってはいけない事を言ってしまいそうだったから。


「唐辛子とあぶらとり紙、買いに行くんだろ。 行くぞ」


あくまで冷静に言った。


俺は気にしてない…気にしてないんだ。
そう言い聞かせて。


その次の日、奈良で団体行動をして、旅館に戻り、他の先生達と宴会場にて酒を飲む。


大量に飲んでしまっていた。


せいじ先輩は見回りに行ってくると、生徒の部屋に行って戻っていたと思ったら、あろうことか姫条を連れてきた。


糸田賢治スペシャルが始まるので、部屋に戻ろうとビール瓶を一本手に持つと、


「せ、先生! わ、わたしも!」


と、姫条が言ってきた。


…まあ、いいけど。


「これ見たらすぐ部屋に戻れよ?」


「い、いえす!!」


姫条は部屋に入って、テレビを食い入るように見ていた。


俺はビールをひたすら飲んでいた。
あまりにも飲みすぎて、それからの記憶があまりない。


最後に覚えてるのは、姫条に、何か言おうとした事。
言えないまま、俺は眠ってしまっていた。
< 192 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop