侍先生!
あ、そうだ。本の事だったよね。
あやうくスルーするとこだったよ。


「これね、せいじが資料室に持ってけって。 女の子に酷いよね~」


せいじ、とは、多持(たもち)せいじ。


数学教師で、すっごいフレンドリーな先生。
だから、名前で呼んでいる。


「こら。 せいじ先生、もしくは、多持先生って呼びなさい。 俺が怒られるんだからな」


先生は、本で私の頭を軽く叩いた。
全然痛くないけど、大袈裟に痛いフリをした。


「え? なんでさむらいだ先生が怒られるの?」


「…お前の教育が悪いんだって、酒の席でいつも言われる俺の身にもなってみろ」


先生は、集めた本の3分の2を持って立った。


「もたもたしない! 昼休み終わるぞ」


「はぁい…」


本、持ってくれるんだ。
先生、優しいなぁ。


私はひとりでニヤけていた。
< 5 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop