レゾンデートル



「私ね、バンドボーカルをしたかったの。アイドルになったのは、その足掛かりとして。

実を言うと、私はアイドルのままでも良いんじゃないかって思うときもあった。
けど、色んなバンドを見てると、私がやりたかったのはこういうことだったんだって思っちゃってさ…

そういうこともあって、バンドのボーカルという夢を諦めきれず、アイドルは引退したってわけよ!」


知らなかった。
いつもキラキラしていたイズミちゃんがそんなことを考えていたなんて。

散々イズミちゃんのファンだと豪語していた自分は、イズミちゃんの上っ面しか見ていなかったのだ。

悔しさや寂しさと同時に、一つの疑問が浮かび上がった。


「でも、顔出ししたら引退する意味なくなりますよね」


俺の疑問に、泉士さんはにこりと微笑んだ。
あれ?天使?
と思わされた刹那、

「そうなのよ…よく気づいたわね鳳くん…」

「あ、なんかスミマセン」


元アイドルらしからぬ形相になった泉士さんに、思わず謝罪した。



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