Sweet * 1LDK


朝、目が覚めると類はいなくなっていた。
多分、あたしがベッドに入ってうとうとし始めたころ、玄関の扉が閉まる音がしたから、どっかに行ったんだろうけど。

ソファに放り投げてある、男物の黒いTシャツとジーパンが、昨日のあれは夢じゃないってことを物語っている。

あたしは何となく、Tシャツとジーパンを手に取り、それを洗濯機に入れた。
ついでにあたしも服を脱いで、それを放り込んだ。

昨日、帰ってきたまま寝ちゃったから、着替えてない。
シャワーもしなきゃ。

時計を見ると10時30分。

さすがに寝すぎて頭痛い。
夏休みだからってバイトもあるし、しっかりしないと…。


洗濯機を回しながらシャワーを浴びて、出て、着替えて、洗濯物を干して。
あたしは家を出た。


家を出た時、携帯が鳴った。
「もしもし?」
『あ、襟花?』

その声にあたしの胸は高鳴った。
早鐘のようにどきどきと鼓動が早くなって。

「郁未くん…?」

『あぁ、ごめんな、電話で。ちょっと忙しくって。』

「ううん。…いいの。」

『…あのさ、昨日来ただろ、類。』

少し後ろめたそうに言う。
あたしはさほど気にしてないような声音で言った。

「あぁ、うん。来たよ。」

『あいつ今家なくってさ。しばらくの間いさせてやってくれない?』

「いいよ、郁未くんの家だし。」

『そっか、ありがと。最近ちゃんと食ってる?金足りてる?』

なぜかあたしは早足で歩き始めた。
なんだろう。なんでだろう。

「食べてるよ、大丈夫。」

ねえ、郁未くんどうして?

『ん。あと、今週は帰れない。もし金足りなくなったら電話して。』

――なんで謝りもしないわけ?

「わかった。じゃあね。」

『ん。』



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