Dear HERO[実話]



「いや、来ないほうがいいと思う。今俺、目腫れててすごい顔になってるんだよ。お前見たら絶対泣くよ…」



「だって心配だよ。どこなの?」



私の声は泣き声になっていた。



「本当に大丈夫だから。今日はごめんな、せっかく約束してたのにな。この埋め合わせは必ずするから…」




いつもと変わらない龍斗の優しい声。

その声に少し落ち着き冷静になる。


ここで私が病院まで行って龍斗の前で泣いてしまったら逆に心配をかけてしまう。

きっと龍斗は痛くても痛いと言えなくなってしまうだろう…。




「…分かった」



そう返事して電話を切った。


切れた電話を手に私は呆然としていた。



ただ会えないだけじゃなく…

龍斗に怪我までさせてしまうなんて神様はなんて意地悪なんだろう。



答えてください。


ただ会いたいだけなのに…

ただ声を聞きたいだけなのに…


どうして二人の限られた時間をいつも奪っていってしまうのですか?

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