Dear HERO[実話]
「ごめん…寒かったよね……」
私は車の中に居て、寒さなんて感じなかった。
でも龍斗は外で冷たい風にずっと打たれていたんだ。
泣き出す私に気付いて戻ってきてくれ…
涙を流す私の側に居てくれた。
いつもあなたが傍に居ると温かかった。
私は一度でもあなたを温めることができたのかな…
心配する私に笑顔でこたえる。
「じゃあな……」
そう言って立ち去る龍斗を目で追った。
今度は泣かない。
龍斗は一度振り返り、私の様子を確かめた。
笑顔で手を振る私を見て安心したように車に向かう。
龍斗の車が動き出すのを見届けてから、私はアクセルを踏んだ。
先に出た龍斗の車はもう見えない。
家に着くまでの間…見慣れた街並みがぼやけて見えた。
雨も降ってないし、霧もない。
私の目に溢れてくるものがあったから…
流れる涙を止められないまま、アクセルを踏み続けた。