心底、不思議。~毒舌カナタとひねくれみーちゃん~
先生の反応が鈍かったので、そいつはさらに言葉を付け足すことにしたらしい。







「あのですね。


教育公務員である教師は、特定の政党や思想を支持するような発言をしてはいけないんですよね。



恥ずかしながら、僕は勉強不足で詳しくは知らないんですが………。


たしか、教育基本法だか教育公務員特例法だかに、そのような記述があると、聞きかじったことがあるんですが」






そいつは、舌を噛みちぎってしまいそうな言葉の連続を、すらすらとこなした。







「………おっ、おお、そうだな……」







先生は、ごくりと咽喉を鳴らしながら答える。




やっと意図が伝わったと判断したのか、そいつは鷹揚に頷いた。








「そうですよね。


では、そのことを鑑みると、先生の今の発言は、全体の奉仕者たる公務員としても、教育という特殊な責任を負う教育公務員としても、いささか不用意な発言ではないでしょうか。



そういうわけで、ちょっと我慢ならずに挙手させていただきました。


まぁ、話の流れで少し口が滑っただけでしょうし、書面に残るわけでもないので、わざわざ指摘することでもないか、とも思ったのですが。



それでも、以後お気をつけいただくためにも、不肖ながら発言をさせていただきました。



授業を中断してしまい、すみません。


同級の皆さんの貴重な時間を奪ってしまったことも、申し訳ありませんでした」








最後に先生と生徒たちに軽く頭を下げてから、そいつは静かに席についた。






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