With a smile
帰りのタクシーからの景色はいつもとは違って見えた。

疲れきった顔のサラリーマンや抱きかかえられてやっと歩く酔っ払ったOLさん、戦闘準備万端の夜のお姉さん、みんなみんな頑張っている。

明日に向かって、未来に向かって必死に生きている。

そんなきらめきに満ちている街は輝いていて、美しく見えた。


「すみません、さっきのホテルに戻ってください」

バックミラー越しに目が合った後、運転手は大きく車をユーターンさせた。



カイさんの部屋の前でカバンの中を確認する。

もう1週間以上前から入っている小さな袋。

それを手にとってチャイムを押す。

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