With a smile
家の前で降りて建都さんを見送る。

「いろいろごちそうさまでした」

「うん。おやすみー」

笑顔を残して、タクシーが去って行った。

行っちゃった、楽しかった、な・・・。

タクシーが見えなくなった瞬間、気持ちとは裏腹に涙が一粒落ちた。

楽しかったのになんで涙なんか。

沢山話して色々分かって、私に笑顔をあんなにくれて、もしかしてまたデザート食べに行けるかもしれないのに。

今まで考えないように思考回路を止めていた分、急激に頭が回り始めた。

あの日公園で泣いていた建都さんの姿が、フラッシュバックしてくる。

あの公園は思い出の場所なんだろうか?それともフラれてそのまま座り込んでいたのだろうか?

どちらにしても、建都さんの中にはまだ彼女がいる。

私と同じ苗字の真木、イニシャルHの彼女。

だから、私の事苗字ではなく名前で呼ぶんだ。

それだけ意識をしてるって事、忘れていない証拠。

建都さんのおかげで『ほのか』が好きになったけど、代わりに『真木』が大っ嫌いになったよ。

私もイニシャルHなの気づいてますか?

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